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「これが現実なんだ……」
海猿 [amazon]
作者:佐藤秀峰
1998年ヤングサンデー(小学館)連載開始
単行本 全12巻

<あらすじ>
 海上保安官:仙崎大輔(せんざきだいすけ)は潜水士として海で引き起こされる犯罪、事件を通し、厳しい現実と命の尊さを知っていく……。

<短評>
 「ブラックジャックによろしく」で大ブレイクした佐藤秀峰がヤングサンデーで描いていた作品。正直、3巻あたりまではパッとしない作品であった。どこかで見たことのある印象しか受けない作品であった。しかし4巻を過ぎたあたりから劇的に大化けし、「命」「現実」といった他の作品でもよく取り上げられる主題でありながら独自の世界観を展開し、強いメッセージ性を持つ名作となった。
 「救助もの」ということもあり、同社で描かれた「め組の大吾」とかぶる部分が少々ある。ただ決定的に違う部分があった。それが「現実性」である。「め組の大吾」は周りから理解されなかったとはいえ、主人公が救助の天才で全20巻通して主人公の関わった事件は死者0であった。これは「現実」にはありえないことである(作品を否定しているわけではない)。
 それに対し仙崎大輔は常に「現実」を味わい続けた。仲間や先輩の死。死体の揚収。そして最後の事件で言った台詞「思い通りにならないから生きる」にこの作品のすべてが込められている。
 「現実」は不本意の連続。だからこそ不本意から生まれる希望を「夢」とし生き続けていく。「現実」と「夢」は反義語ではない。同義語とまでいかなくても、もっと「仲良し」の言葉でいいはずだと私はこの作品を通して思った。


熱い男

 
   
クールな男
ストーリー
画力
キャラクター
構成力
感動 SS
現実
評点 84


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不良はカッコよくなくてはならない
クローズ(外伝・その後のクローズを含む) [amazon]
作者:高橋ヒロシ
1990年月刊少年チャンピオン(秋田書店)連載開始
単行本 全26巻 外伝 全2巻 その後のクローズ 全1巻

<あらすじ>
 不良少年たちが集まる、通称「カラスの学校」と呼ばれる鈴蘭男子高等学校。そこで最大派閥を誇る阪東一派と2年の桐島達が対立する最中、金髪の不良:坊屋春道が転校してきた。

<短評>
 不良漫画の最終進化系といっても過言ではない作品。これ程までに「不良の不良による不良の為の世界」が描かれた作品は他には無い。「ろくでなしBLUES」では青春純愛的表現も多かったがこの漫画は本当に男のみの闘争だけ。そこにはセックスもなくドラッグもなく女性もない。徹底的な男たちだけのバイオレンスが描かれている。この作品に出てくるキャラは「不良」だらけでも「外道」「悪者」はまずいない。獲物を持たないことをモットーとし、タイマンで決着をつけることを信条とする連中ばかりである。その徹底さが多くの人を惹きつけてカッコイイと思わせるのである。
 しかしこの漫画の主人公「坊屋春道」はある意味では異色のキャラだ。外伝で行動原理と過去が少し描かれる以外にキャラの背景(家族や進路等)が全く描かれなかった。最後までただ単純に自分の不良を貫き通して、そしてその後のクローズにおいて「学校やめるわ」と言い残して学校を去ってしまった。これは主人公に透明感を作って感情移入させやすいようにした作者の工夫かもしれない。
 また、跡目や引継ぎを描こうとしたことは初期の人気キャラを出させなくさせるという事で作者にとって冒険であったと思うが無理も無かったし個人的に好感が持てる所。外伝では人気キャラの背景がその後のクローズでは「WORST」に繋がる背景が描かれているので是非一読しておきたい。


熱い男

 
 
クールな男
ストーリー
画力
キャラクター
構成力
不良 SS
カッコよさ
評点 84


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殺し屋の代名詞。彼の正体は21世紀に持ち越された
ゴルゴ13 [amazon]
作者:さいとうたかを
1968年ビッグコミック(小学館)連載開始
単行本 既刊131巻(2003年12月現在) 単行本はリイド社より発売

<あらすじ>
 本名・国籍一切不明。狙った標的は必ず仕留め、各国の上層部からもその腕を認められた殺し屋通称・ゴルゴ13(自称・デューク東郷)。今日もまた依頼を受け、標的を仕留めていく……。

<短評>
 漫画を読まない人でも殆どの人が知っている説明不要の作品。1968年の連載開始以来そのスタンスを変えることなく、34年の長期に渡り連載を続けているビッグネームと言えるだろう。
 しかし、スタンスを変えること無くと言ったが、綿密に言うとそれは違ったりする。1巻を読めばよく分かるが初期のゴルゴは笑ったり、あっさり背後を取られたり、無駄に喋ったりと一流の殺し屋にはあるまじき事をしている。これは作者がまだゴルゴ13像を明確に捕らえられなかったからであろう。しかし、巻を重ねるごとにそういったことは無くなり現在のゴルゴ13ができあがったわけである。
 当作品に95点オーバーの大評価をしている訳だが、これは決してすべての話が95点オーバーでは無い事を断っておく。中には完成度の低い話も存在する(特に初期の頃)。それでも大評価している理由は「すべて人民のもの」、「マークのリクエスト」、「病原体レベル4」、「黄金の犬」といった超名作があるからである。これらの作品はかなり後期の巻に収録されている。後期になるほど社会情勢とリンクしていて勉強になったり、社会情勢が関係なくても完成度の高い話が多いので読み始めるのなら100巻を過ぎたあたりから読み始めても良いと思う。


熱い男

   
 
クールな男
ストーリー SS
画力
キャラクター SS
構成力
社会情勢
ゴルゴの神度 SS
評点 98


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笑えるのに痛ましく共感する。痛ましく共感するのに笑える。
最強伝説黒沢 [amazon]
作者:福本伸行
2002年ビッグコミックオリジナル(小学館)連載開始
単行本 既刊3巻(2004年7月現在)

<あらすじ>
 黒沢は44歳独身。職業はどこにでもあるような中小企業の土木作業員。自分の人生が漠然と年齢を重ねただけであることに気付き、その状況を何とか打破しようとするのだが……。

<短評>
 この漫画の主人公である黒沢はやる事全ての空回りっぷりは中年男性の悲哀とか哀愁を超えた痛ましさ。そのカッコ悪さっぷりに思わず笑ってしまうのは黒沢より自分が幸福だからかもしれない。だけど笑いっぱなしにするにはあまりにも痛ましすぎるし、苦境から必死に立ち上がろうとする黒沢の姿を見るとやはり共感を覚える。そんな笑いと共感のバランスが絶妙に取れているのが凄すぎる。この作者にしか描けない「福本イズム」が炸裂していると言える。
 読者にとって舞台が身近だからこそリアリティを感じれるのだろうが、その見せ方も上手過ぎる。第1話の最初のページから「感動などないっ……!」とかぶち抜きで描かれようものなら目を奪われるし、作業ロボット「太郎」の頑張りに黒沢が感動して「太郎」を抱きしめたら、他の作業員にもそれが伝染して皆して「太郎」を抱きしめる所など最高。笑える。だけどこのシーンほど泣けて共感できるシーンもないと思える。先程も言ったがその辺りのバランスが本当絶妙。ただその絶妙さに加えて福本伸行独特の言い回しや「太郎」や「アジフライ」に代表される普通に見たらどうでもいい小さい話から黒沢の人間臭さ、器の小ささを描くのはきっとこの作者にしかできない。最近は黒沢が「最強伝説」へと突っ走っているが、この展開をどう収拾つけるかも見所。


熱い男

 
   
クールな男
ストーリー
画力
キャラクター SS
構成力
共感 SS
笑える SS
評点 89


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原作だけに収まらない風雲戦国絵巻
花の慶次 −雲のかなたに− [amazon]
画:原哲夫 作:隆慶一郎
1990年週刊少年ジャンプ(集英社)連載開始
単行本 全18巻

<あらすじ>
 異様な振る舞いや突飛な行動を愛する者をさす「傾奇者」。真の傾奇者は己を美しゅうするために命を賭した。時は戦国、ここに天下一の傾奇者がいた。その男の名は前田慶次という。

<短評>
 史実を描いた歴史小説を原作にしたものだが、かなりアレンジがされている。おふうや岩兵衛といったかなり出番のあるキャラでも原作には登場しないオリキャラなのでかなりのアレンジがされていると分かるだろう。しかし史実を巧みに少年漫画調にアレンジしたことは大きくこれは原哲夫の上手さが光った。また真田幸村や伊達政宗といった原作では直接慶次と関わりの無かった歴史上の人物も慶次と絡ませることでエンターテインメントの幅を広げていて、素直に楽しむことが出来る。それに慶次が傾奇者らしく明るい性格で物語を明るくしている為「北斗の拳」のような暗さは無く読みやすい。
 無論他の作品と比較して見なくとも面白い。最大の見せ場である秀吉との謁見は圧巻。直接的な戦いではなく、心による鬩ぎ合いが周りの大名たちと同じように読者をハラハラさせる。秀吉が慶次の腹が読めた時に「いくさ人」の顔へと変わる場面は小説では描けない漫画の良さであろう。
 私が個人的に好きなキャラは原作には登場しない子供の殿様:水沢隆広。このキャラが言放った「父上によう言われました。君主たる者、うかつに家臣に本音ば見せればそれだけで家臣を殺すこともあると。」は今の日本人が忘れた何かを説いている言葉だと思う。戦国の世がそうさせたとはいえここまで格好良い子供というのは他の作品では見たことが無い。  


熱い男

 
   
クールな男
ストーリー
画力
キャラクター
構成力
格好良い男達 SS
娯楽性
評点 85


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あなたの心の傷を壊します
MIND ASSASIN [amazon]
作者:かずはじめ
1994年週刊少年ジャンプ(集英社)連載開始
単行本 全5巻(作者曰く完結していないらしいが)

<あらすじ>
 表向きは精神科医である奥森かずいは、手に触れるだけで相手の精神を破壊できるという超能力を持っており、深い悩みを持つ患者の為にその能力を使っているのだが……。

<短評>
 基本は一話完結式で心温まる展開が繰り返される作品であるが、心温まる展開そのものよりその見せ方が非常に上手いのが特徴。父を亡くしたかずいが壁に凭れ泣くシーンや虎弥太を攫った男が虎弥太に励まされるシーン等一歩引いた所から情景を描いて空虚な空間を生み出すことで喪失感、悲哀を描いているのはこの作品が持つ物静かなイメージに合っていて上手いと思う。
 それに見せ方だけでなく心温まる展開も決して悪くは無い。勧善懲悪な少年漫画というイメージも強いが、心悩み自殺に追い込まれる者、かずいと同じく人を殺す者、精神を壊される者としてあらゆる人間が出てくるが、壊される前必ずかずいと語り合っている。そのシーンはこの作品、そしてかずいが持つ悲愴感を一層際立てていてドラマを盛り上げている。
 また、「暗殺者」という話が重くなりやすい設定でも物語の中心を人情話に持っていくことで読みやすくしたことも評価できる。それは「医者=暗殺者、殺し屋」という有触れた設定の中に「精神科医」という設定を入れたことが大きい。
 絵柄も女性に好まれそうな綺麗な絵で特に目立った弱点は無いと思う。ジャンプの作風に合わない為か早々と連載終了となってしまったのは勿体無いのではないかと。


熱い男

   
 
クールな男
ストーリー
画力
キャラクター
構成力
人間ドラマ
見せ方
評点 79


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切れ味鋭い不良漫画
ろくでなしBLUES [amazon]
作者:森田まさのり
1988年週刊少年ジャンプ(集英社)連載開始
単行本 全42巻

<あらすじ>
 ケンカは強いが頭は悪い前田太尊は二人の舎弟、米示と勝嗣を引き連れセーラー服が可愛いという帝拳高校に入学した。太尊は入学早々応援団とボクシング部の抗争に巻き込まれる。

<短評>
 まず絵の巧さを第一に褒めたい。確かに1巻を最初に見たときはお世辞にも巧い絵とは言えないかもしれない。だが、当初から表情の巧さは完成されていた。笑顔、ギャグ顔、泣き顔、怒りの顔。一つ一つに魅力が溢れている。巻を重ねるごとに絵そのものも巧くなっていき切れ味鋭い絵になっていった。また、作者の取材力には定評があり風景描写も素晴らしく、井の頭公園や大阪に行くとこの作品の風景描写の巧さが身に沁みて分かる。
 また、キャラクターの魅力にも溢れている。殆どの登場人物は不良でありながら得物を使った喧嘩などしない。何かに餓えている不良という描写にリアリティがありながら、喧嘩の方法はクリーンで実在する不良とは遠い。だが、それが一層キャラクターの魅力に磨きをかけている。
 この漫画には青春群像ともいうべき恋愛も多く語られる。ヒロインである千秋は今見ると主人公を陰ながら支えるという少々使い古された印象を受けるのは致し方ない。それでもじれったい恋愛群像も良い感じに描かれている。それにこの作者はギャグセンスも高い(詳しくは「ぶるーちゅ」で)。
 何時の時代でもカッコいい男に憧れることはあることだ。こんな時代だからこそこの漫画のキャラに憧れる人は多いと思う。私も11巻の浜田の後姿には惚れてしまったのであるから。  


熱い男

 
   
クールな男
ストーリー
画力 SS
キャラクター
構成力
カッコよさ SS
ギャグ
評点 86


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「クローズ」から繋がる不良たちの世界
WORST [amazon]
作者:高橋ヒロシ
2001年月刊少年チャンピオン(秋田書店)連載開始
単行本 既刊9巻(2004年10月現在)

<あらすじ>
 長きに渡りボスとして君臨してきたゼットンが花木グリコに敗れ群雄割拠となった鈴蘭。そんな中恒例の一年戦争が幕を開けるが未だ存在しない鈴蘭のボスを目指すと言う男・月島花が現れる。

<短評>
 まずこの作品を読む前に「クローズ」と「その後のクローズ」を読んでおくことは前提条件である。「WORST」だけでも読めないことはないが「クローズ」の続編に当たる本作には「クローズ」のキャラも多々出てくる為読んでおいた方が何倍も楽しいのは当然と言える。
 「クローズ」で磨かれた不良描写はこの作品でも健在。作者が成長しているので完成度という点では本作の方が上かもしれない。相変わらずカッコいい不良たちがバイオレンスに身を投じる作品となっているが、「クローズ」に比べると不良の濃さが際立ってきた感じである。特に敵キャラとなる連中は「不良」というより「外道」に近いかもしれない。しかし主人公たちは「クローズ」から続くカッコいい不良たちでありやはり見ていて爽快。明るく透明感のある主人公という点では「クローズ」と同様になっている。
 しかし「クローズ」の終盤でもそうだったが登場キャラが本当に多い。元々キャラの描き分けは上手くない作者なのでキャラを頭に入れるのが一苦労である。この点はこの作品というより作者自身の弱点であろう。その点を除けばやはりカッコいい作品であることは間違いない。花がこの先鈴蘭のボスとして君臨出来るかを楽しみにしている。


熱い男

 
   
クールな男
ストーリー
画力
キャラクター
構成力
不良
完成度
評点 80


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